(1) 下地が不安定または凹凸が多い場合
シート防水は下地が平滑であることが求められます。
下地が不安定、もしくはひび割れや凹凸がある場所では、シートが密着しにくく、隙間から水が浸入するリスクが高まります。また、下地が動くとシートの破損につながるため、構造的に不安定な場所や大きな変形が予想される場所には向いていません。
特に、古い建物でひび割れが進行している場合や、振動が多い場所では適さないことがあります。
(2) 複雑すぎる形状の場所
シート防水は、ある程度の複雑な形状に対応できますが、極端に入り組んだ形状や細かなパーツが多い場所には不向きです。
シートは大きな面積に対応するのに優れているものの、細部の施工や複雑な角度の多い箇所では、接合部が増え、その分施工精度が求められます。
結果的に、防水性が低下するリスクが高まるため、複雑な形状が多い場所では他の工法(塗膜防水など)の方が適している場合があります。
(3) 頻繁に穴を開ける必要がある場所
シート防水は、固定具やアンカーを設置するためにシートに穴を開けると、そこから水が侵入する可能性があります。
例えば、屋上に設備や手すりを頻繁に設置する場合、その都度シートに穴を開けることが必要になり、穴を開けた部分を適切に処理しなければ漏水のリスクが高まります。このように、頻繁に穴を開けたり、貫通部を作る必要がある場所には向いていません。
(4) 非常に高温や化学物質にさらされる場所
シート防水に使用される材料の一部は、極端な高温や化学物質に対して弱いことがあります。
例えば、塩化ビニルシートは高温での劣化が早く、直射日光や高温環境下では使用に適さない場合があります。
また、化学工場や産業施設など、薬品や化学物質が頻繁に使用される場所では、シートの耐薬品性に問題が生じる可能性があるため、特別な耐薬品性を持つ防水材を選定しなければなりません。
(5) 長期的にメンテナンスが困難な場所
シート防水は比較的メンテナンスが容易ですが、それでも定期的な点検や補修が必要です。
特に、接合部分が経年劣化することで防水性能が低下する可能性があるため、長期間にわたってメンテナンスが行えない場所、あるいは点検や補修が困難な場所には向いていません。
例えば、メンテナンスアクセスが制限されている高層ビルや狭いスペースでは、後々の補修が難しくなる可能性があります。
(6) 極度に動きの多い構造物
シート防水は柔軟性を持ちますが、構造物が大きく動いたり、頻繁に揺れたりする場所ではシートが引き裂かれたり、接合部が劣化しやすくなります。
例えば、振動が多い機械設備の近くや、地盤沈下が予想される地域などでは、シートが破損するリスクが高くなるため、別の防水工法が適していることがあります。