(1) 事前調査

スプレー工事前の屋根

超速硬化ウレタンスプレー防水工事を成功させるための最初のステップは、事前の現場調査です。
この段階では、施工箇所の状態や環境を詳細に確認し、適切な施工計画を立てるための重要な情報を収集します。

1.現場調査の目的

現場調査は、施工対象となる屋根や壁、床などの下地の状態を確認するために行われます。
この調査では、下地にひび割れや凹凸、汚れがないか、表面の状態が防水工事に適しているかをチェックします。
また、周囲の環境も重要で、温度、湿度、風の強さなどが施工にどのような影響を与えるかを評価します。

2.重点確認事項

施工対象箇所の材質(コンクリート、金属、木材など)に応じた施工方法を選定します。
さらに、配管や端部などの複雑な形状部分があるかを確認し、適切な対策を講じるための準備を進めます。
施工対象箇所が平滑でない場合や、油汚れ、ほこり、カビが存在する場合は、それらが防水層の密着性を損なう可能性があるため、後述の下地処理で対策が必要です。

3.施工環境の確認

施工環境も重要な要素です。特に湿度や温度が高すぎたり低すぎたりすると、ウレタンの硬化プロセスに影響を与える可能性があります。
現場の気象条件が施工に適しているか、また必要に応じて適切な施工タイミングを選定するための情報を取得します。

4.プライマーの選定

屋根

防水工事におけるプライマーの役割は、下地との密着性と中塗り材や上塗り材との密着性を向上させるために防水の最初の段階で使用する材料であり、下地によってプライマーの選定をする事により的したプライマーを使用する事により防水材料の間にしっかりとした密着層ができます。選定下地がコンクリートの場合・金属下地の場合・既存防水を撤去せず(下地シートの場合またはウレタン防水の場合と下地によってプライマーを選定します。

(2) 下地処理(プライマーの塗布)

1.表面修繕

屋根の汚れの除去作業
綺麗に磨かれた屋根

施工箇所の表面がほこり、汚れ、油分、カビなどで覆われている場合、それらを徹底的に除去します。
これには、高圧洗浄や化学洗浄が含まれ、特に油汚れやカビはウレタンの密着を妨げるため、念入りな清掃が必要です。
また、金属面の場合、錆がある箇所はしっかりと除去し、防錆処理を行います。下地にひび割れや損傷がある場合は、これを修繕します。コンクリートの場合は、モルタルでの補修、金属の場合は補修材を使用して下地を平滑に整えます。また、凹凸がある場所も平滑にしておくことで、ウレタンの均一な塗布が可能になります。
これにより、防水層の強度や耐久性が高まり、長期にわたる防水性能を発揮します。

2.プライマーの塗布

プライマー塗布される屋根

下地とウレタン樹脂の密着性を高めるために、プライマーを塗布します。
プライマーは、ウレタンと下地の接着を強固にする接着剤の役割を果たします。特に、下地がコンクリートや金属など吸水性や化学反応に影響を受けやすい場合、プライマーの選定と適切な塗布が重要です。
プライマーの乾燥時間をしっかりと確保した上で、次の工程に進みます。

3.飛散対策養生

施工箇所を養生で囲い飛散を防止します。

(3) 超速硬化ウレタンのスプレー施工

事前準備が整ったら、専用の機材を使用して超速硬化ウレタン樹脂をスプレー塗布します。
このプロセスは、防水工事の中心となる部分であり、精密な施工が求められます。

1.スプレー機器の設定

スプレー防水の専用機材

超速硬化ウレタンスプレーは、ポリオールとイソシアネートという二成分を混合して使用します。スプレー機器内でこれらが混合されると、瞬時に化学反応が始まり、ウレタン塗膜が形成されます。
スプレー機器は、圧力、温度、混合比率を適切に設定する必要があり、これにより膜厚や仕上がりの均一性が決まります。

2.ウレタンの均一な吹き付け

スプレーでウレタンを施工する際、膜厚が均一になるように注意しながら作業します。
特に、形状が複雑な場所(出隅・入隅、配管周り、縁など)や、隙間がある場所にもムラなく塗布するために、専門技術が求められます。
スプレーの距離、角度、スピードに気をつけながら、適切な膜厚を確保するため、複数回にわたって丁寧に塗布します。

屋根にウレタンスプレー防水施工する作業員

3.膜厚の管理

超速硬化ウレタンの膜厚は防水性能に直結するため、工法にもよりますが、塗布時に1.5mmから2.0mmの膜厚を目安として(確保します。施工箇所の使用環境や耐久性の要求に応じて、2〜3回の塗り重ねを行うこともあります。膜厚が不十分だと、防水性能が弱まるため、塗布ごとに膜厚を確認しながら作業を進めます。

4.飛散対策養生

施工箇所を養生で囲い飛散を防止します。

(4) 硬化プロセス

スプレーの吹き付け

ウレタンの吹き付けが完了した後は、硬化プロセスに入ります。
超速硬化ウレタンは短時間で硬化が進むため、他の工法と比べて施工時間が大幅に短縮されるのが特徴です。

1.硬化速度の確認

超速硬化ウレタンは、施工後わずか数分から数時間で硬化が完了します。硬化速度は、施工環境の温度や湿度にも影響を受けるため、現場の環境条件に応じて適切な管理が必要です。通常、硬化が進むと表面が乾燥し、早ければ当日中に次の工程に移行できます。

2.硬化中の環境管理

硬化中は、ほこりや砂などの異物がウレタン塗膜に付着しないよう、現場の環境を整えることが大切です。特に、施工中は風や雨を避けるため、仮設の覆いを設置することもあります。硬化の進行を定期的に確認し、表面に問題がないかチェックします。

(5) トップコートの塗布

施工箇所の使用目的や環境に応じて、ウレタン防水層の上にトップコートを塗布します。
トップコートは、防水膜を紫外線から守り、耐久性を向上させるための保護層です。

トップコートを塗る屋根

1.耐摩耗性の強化

トップコートは、耐摩耗性や耐紫外線性を向上させる役割を持ちます。
例えば、屋上や駐車場など、日常的に車両や人が通行する場所では、ウレタン塗膜が摩耗しやすいため、トップコートでの保護が必要です。

2.外観の調整

トップコートで仕上げた屋根

トップコートは、色を選べたり、仕上げの質感を調整したりすることが可能です。
これにより、防水層の耐久性だけでなく、見た目の美しさも保たれます。特に、商業施設や住宅など外観が重要な場所では、トップコートの仕上がりにもこだわることができます。

(6) 最終確認と品質チェック

全ての工程が終了した後、施工の最終確認を行います。このステップでは、防水層の品質が設計通りに仕上がっているかを徹底的にチェックし、施工不良がないことを確認します。

1.膜厚の測定

専用の膜厚計を使用して、防水層の厚みを測定します。
膜厚が均一であることは防水性能の保証となるため、施工箇所全体で十分な膜厚が確保されているかを確認します。
必要に応じて、膜厚が足りない部分には追加施工を行います。

2.最終清掃と引き渡し

最終確認が完了したら、現場の清掃を行い、使用した機材や材料を撤去します。
引き渡し前に再度施工箇所の点検を行い、問題がなければお客様に施工完了の報告を行います。

(7) メンテナンスとアフターケア

超速硬化ウレタンスプレー防水は長期にわたって優れた防水性能を発揮しますが、定期的なメンテナンスが推奨されます。
特に、使用環境が過酷な場合は、定期的なメンテナンスが防水層の寿命をさらに延ばすために重要です。防水層は一般的に長期間の耐久性を持ちますが、経年劣化や外的要因によるダメージが蓄積されることがあります。

1.定期点検の重要性

数年ごとの定期的な点検は、防水層が正常に機能しているかを確認し、潜在的な問題を早期に発見するために欠かせません。
特に、頻繁に使用される屋上や駐車場、過酷な天候条件に晒される外壁などでは、劣化が早まる可能性があります。
定期点検では、塗膜のひび割れ、剥がれ、紫外線による劣化がないかを確認します。

2.メンテナンス計画の策定

点検結果に基づき、必要に応じてトップコートの再塗布や局所的な補修を行います。
これにより、防水層の劣化を最小限に抑え、長期的な防水性能を維持します。
防水工事の適切なメンテナンス計画を立てることで、大規模な修繕の必要性を減らし、建物全体の保護を強化します。

3.緊急時の対応

万が一、漏水や局所的な破損が見つかった場合は、迅速な補修が重要です。
超速硬化ウレタンスプレーは、部分的な補修にも対応でき、迅速に問題箇所を修繕することで、被害を最小限に抑えます。特に、雨漏りが発生した場合などは、迅速な対応が建物全体の保護に直結します。